《コラム》02 「路地」

投稿日:2014.02.08

私は路地が好きだ。

 

路地裏と呼ばれるようにそこは表通りに面した華やかな場ではない。知る人ぞ知るようなストリートの所もある。突き当たって行き止まりになってしまうような路地もあるし、迷路のようなところもある。長く狭い路地を抜けた途端に予想もしていなかった素晴らしい風景に出合うこともある。そんな時はとても嬉しくなる。

 

 

普段は車を運転して通り過ぎてしまう街中をときには歩いてみる。そうすると二人がやっと並んで歩けるくらいの路地を発見して、そこを歩いてみたくなる。もちろん初めて歩く道だ。普段は特定の人たちしか通らない路地であろう。しかしそこに暮らす人たちの生活感がにじみ出ている。沢山の人たちが行き交う場所ではないが、家の入口の設えをきちっと整えているところもあれば、扉の横の壁に赤い郵便ポストがかけてあるだけのところもあり、それだけでここに暮らす人がいることがわかるときもある。猫がねそべっている姿がよく似合う場所でもある。見知らぬ人が通っても我感じずと堂々としている姿は存在感を感じる。

 

この写真の路地は豊岡市元町の商店街の一画にある。ほとんどの人は知らないであろう。この近くでその昔銀行であった古い建物を修理し、医院に改築工事をしていた時に偶然見つけた場所である。杉の羽目板が統一感があって美しい。狭い路地なので、どの家も外には障害になるようなもの一切置いていなくて気持ちが良い。この路地を通り抜けると道路に当たり通行量も多い。

 

その昔、ここに道路はなく円山川の川べりであった。その護岸は、現在の市民会館あたりから円山川本流との合流地点まで玄武岩が積み上げてあった。その姿を対岸の市民体育館側から見ると壮観であった事を記憶している。その護岸はそのまま埋め立てられて城崎へ通じる道路の中に埋まっている。更に歴史を遡ればこの辺りは北前船の品物を荷揚げする船着き場でもあった。その時代この辺りは多くの人々の往来があり賑わっていたのであろう。当時の建物はなく、道路は改修されて面影を残すものを目にすることはないが、細い路地にいると視野が狭くなった分、思いを馳せることができる。

 

 

豊岡市元町にて撮影。この日は1月最終日。例年よりも気温が高く、過ごしやすい日であった。

 

 

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