《コラム》36 「バスガイド」

投稿日:2018.09.28

 全但バスの一泊二日のバスツアーで黒部と立山へ行ってきた。

 豊岡を午前5時に出発して最初の目的地、黒部峡谷鉄道トロッコ電車の始発駅宇奈月温泉まで約8時間のバスの車中である。ここでその長い時間を退屈させずに客を楽しく和ましてくれるのがバスガイドである。車窓から見える風景を右に左と実に巧みに説明をしてくれる。移り変わる山や川、町並みの特徴など原稿を持たずによく覚えているものだと感心する。

 私の中学の同級生にバスガイドをしている女性がいて話を聞いたことがある。ガイドはバスの進行方向に背をむけて説明するのだが、目標物を示すのに手をあげて説明する、その手の上げ方が重要なのだという。次々に流れる風景を正面に見ながら説明するのではないので次にくる目標物を頭に描いて絶妙のタイミングで手をあげて指さすのだそうだ。実に見事である。

 宇奈月温泉に宿泊し、二日目は美女平から雪の大谷、立山室堂へ登り、そこから前日と同じ北陸自動車道を通って一路豊岡へ帰るのであるが、外の風景は前日に見ている。そこで長い車中を飽きさせないように、歌を唄ったり、客に話しかけたり。円熟味のあるその話術は嫌みがなく、時には生活感のある話を入れながら笑いを取るテクニックはベテランの味で、最後まで楽しく過ごすことができた。

 親しくなって話しかけてみた。「ガイドさん、名所旧跡や山の高さなどよく覚えられますね」「覚え方にコツがあるんですよ。神鍋の蘇武トンネルの長さは知っていますか?3692メートルですね。サムイクニと覚えるんですよ」なるほど、これはもう忘れる事はない。楽しい旅であった。また行きたくなった。

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