《コラム》31 「城崎温泉ロープウェー」

投稿日:2017.06.27

 この度縁あって城崎温泉にあるロープウェー山頂駅舎のカフェ改築工事をさせて頂いた。この施設は温泉街の一番奥にある、外湯「鴻の湯」の前にあり大師山山頂まで長さ676m、高低差200m、所要時間7分のロープウェーで昭和38年5月に完成した。山頂からは城崎温泉街から円山川、日本海まで見渡せて大変眺めが良い処である。このロープウェーの建設を発案されたのはこの地の出身で関西電力の初代社長である、太田垣士郎さんである。

 太田垣氏はあの黒四ダムを建設したことで有名である。太田垣氏は昭和26年、関西電力の初代社長に就任しました。当時の電力事情は停電は日常茶飯事であり、お客さんに安定した電力を供給する事が一番の課題でした。そこで太田垣氏は激増する電力需要に対応するために、昭和31年に黒部川第四水力発電所の建設に着手しました。戦後の電力不足を解消するために難工事覚悟で着工したものの、長期間工事停止により、建設断念寸前まで追い込まれました。

 当時のお金で530億円の巨費と、延べ1千万人の労働力を投じ、幾多の困難に立ち向かい、中でも大町トンネルの大破砕帯突破の敢行を陣頭指揮しました。この破砕帯の突破がダムの成否を決める大きな鍵でありました。進むも地獄退くも地獄の状態の中、制止を振り切って破砕帯に踏み込み、ずぶ濡れになりながら「でかい仕事に困難は当たり前じゃないかクロヨンはあなたがたにかかっている。一緒に苦労し、一緒に喜びましょうや」と泥まみれの作業員の肩をたたき励ましたそうです。幾多の困難を乗り越えてダムは完成し、電力の安定供給が確保されました。

 故郷城崎温泉の発展を願い、温泉街が一望出来る場所にロープウェー建設を発案し昭和38年に完成しました。山麓駅の乗り場の前に「太田垣士郎資料館」がある。今回の山頂駅カフェのリニューアル工事にあたり、資料館を見学し、太田垣氏の語録が目に留まった。「経営者が10割の自信を持ってとりかかる事業、そんな物は仕事の内にはいらない、7割の成功の見通しがあれば勇断に実行する。それでなければ本当の事業はやれるものではない」

 この度のロープウェー山頂駅舎のカフェ改築工事にあたり、建設場所からして困難な事もあったが、太田垣氏の信念を少しながらでも継承することが出来たなら喜びである。 

※太田垣士郎資料館様の資料より参照

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