《コラム》26 「雛祭り」

投稿日:2016.04.09

 先日、あるOB様のところに伺うと、お雛様が飾ってあった。この時期、雛飾りが出ているお宅は決して珍しいことではない。女の子が生まれた家には大抵五段飾りや、七段飾りなどの豪華な雛段が座敷に飾ってある。そんな家には、何とも言えない柔らかさと華やかさが感じられる。

 今回伺ったOB様のお宅には三ヶ所に飾ってあった。ひとつは玄関の飾り棚に内裏雛、座敷には段飾り、そして店の間の隅に古風で小ぶりな雛飾りがさりげなく置いてあり目を引いた。その古風な雛は、奥様が生まれた実家で飾ってあったものらしい。この奥様の実家は弊社が昨年リノベーションをさせて頂いた。その際に家財の片づけをしていて偶然見つかり、ケースを開いてみると傷みがほとんどなかったので持ち帰って数十年振りに飾られたのだという。奥様がこれを飾られる時には、きっと生まれ育った実家での幼い時の楽しく遊んだ記憶が蘇り懐かしさがわいてきたことであろう。

 この雛祭りは、一年の五節句のうちの一つで「桃の節句」である。日本には平安時代を起源とする「五節句」という行事があり季節の節目に身の穢れを祓い、健康長寿や厄除けを願う風習があった。雛祭りは女の子のための行事であり女児の初節句には雛人形を用意し、健やかな成長と幸せを願いながらお祝いをする。「桃の節句」という別名は、桃の開花時期に重なるというだけでなく桃の木には邪気祓いの力があり、節句を祝うのにふさわしいと考えられたことから、このように呼ばれるようになったといわれている。

 この日を飾る行事食には、菱餅・ひなあられ・白酒・甘酒・はまぐりのお吸い物・ちらし寿司等、それぞれいわれがあるらしいが、女の子の行事らしい華やかな食事である。

 毎年この時期にお雛様を出す度に、わが子の幼い時の記憶が思い出され、その郷愁にふけること、まことに日本らしい文化であると感じる。

ブログ検索

アーカイブ